黒い春 (幻冬舎文庫)
山田宗樹 黒い春

春になると冬に跳んだ胞子が体内という異種の中で芽吹いて身体に悪さをする。芽吹かれた人間は黒い液体をはいて死ぬ。そんな病気なので黒手病といい、だから黒い春なんだろうけど、そんな病気に立ち向かう研究者や医師のお話。
でも、正直なにが言いたいのかわからない。
病気に打ち克とうと決意させあらたな一歩を踏み出そうとさせた。って事なんだろうケド、黒手病という伝染病の恐怖をストーリーとして展開していきながらこちらの方に重きを置いているという割合。
伝染病的に考えると、飯守という主人公の一人の妻の雪子がこの病気に、本当に個人的な恨みの報復でもって罹ってしまい死ぬんだけど、その動向になかまが一喜一憂してみたりとか、どうしてもしみったれていると思えてしまう。
松子の延長としては面白いのだけども。読み手としてのあたしはどうしても伝染病の恐怖と小野妹子という歴史上の人物との関係について、内田先生辺りとは違うストーリー展開になってきたあたりで、恐怖の胞子をあたしにも降らして欲しいと思ってしまうんだよ。